メル・ブルックス 2本立て|映画スクラップブック


メル・ブルックス 2本立て(2本)

2020/04/22

ブレージングサドル

ブレージングサドル|soe006 映画スクラップブック
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BLAZING SADDLES
1974年(日本公開:1976年02月)
メル・ブルックス クリーヴォン・リトル ジーン・ワイルダー ハーヴェイ・コーマン マデリーン・カーン スリム・ピケンズ

シネマスコープのスクリーンに赤金のワーナーブラザース・マーク、大平原、フランキー・レインの力強い主題歌、豪快に響く鞭音、ヒャッハー!
クレジットにテクニカラーとある、ここは4色グラビアみたいに安っぽい発色のワーナーカラー(イーストマンカラー)で撮ってほしかったなあ。

過酷な労働を強いられている鉄道敷設の人夫たち、私腹を肥やすため詭謀めぐらす資本家、その手下たち、町を守るためやって来る正義の保安官、保安官を助ける早打ちのガンマン、蜂起する市民たち、馬もたくさん走る。勧善懲悪、西部劇の王道ストーリー。

ジョン・モリスの音楽が素晴らしい。美術セットが素晴らしい。撮影が、照明が、衣装が素晴らしい。
セシル・B・デミルの「大平原」から借りてきた、鉄道利権をめぐる基本設定は良い。しかし……メル・ブルックス!

こんなにお金も手間もかけて、何故かようにくだらぬギャグ映画ばかり作るのか。「プロデューサーズ」でも「ヤング・フランケンシュタイン」でも、巨根と絶倫が主人公のピンチを救う。シモネタ入れないと精神を平静に保てない病気にでも罹っておるのか。

悪漢どものオーディション場面あたりから、映画はメタなドタバタ騒動に発展。ドイツ兵、KKK団、ヘルス・エンジェル(バイカーギャング)、舞台もスクリーンとスタジオを行ったり来たり、ヒトラーやミュージカル・ダンサーまで巻き込んで、いたずら小僧のおもちゃ箱をひっくり返したような有様。最後は喜劇映画の定番、パイ投げ合戦となる。

ずらり並んだ馬上の悪漢たちがジーン・ワイルダーに銃口を向ける場面で、だれひとり撃鉄を起こしていない。笑いを狙ってのことなのか、単なるミスなのか分からない。初めて観たときから、どっちだろうって、ずっと気になってる。

黒人人夫たちがソフィスティケートなコーラスで歌うのは、コール・ポーターの「君にこそ心ときめく」。荒野のカウント・ベイシー楽団が演奏していたのは、彼らのヒットナンバー「パリの四月」。歌姫マデリーン・カーンがドイツ人なのは、「砂塵」のマルレーネ・ディートリヒのパロディ。保安官が乱暴者モンゴに菓子箱を渡すとき、ワーナー漫画「バックスバニー」のメロディがちょこっと流れる。漫画映画を知っていれば、それだけで箱の中身が分かる。スタジオで撮影中のミュージカル・ナンバー「フレンチ・ミステイク」はメル・ブルックス作詞作曲のオリジナル。ヒットラー登場場面では「プロデューサーズ」の「ヒトラーの春」がちょこっと流れる。

実に、く・だ・ら・な・い。

65

2020/04/21

ヤング・フランケンシュタイン

ヤング・フランケンシュタイン|soe006 映画スクラップブック
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YOUNG FRANKENSTEIN
1974年(日本公開:1975年10月)
メル・ブルックス ジーン・ワイルダー ピーター・ボイル マーティ・フェルドマン マデリーン・カーン クロリス・リーチマン テリー・ガー ジーン・ハックマン

この映画が日本でパロディを流行らせた。これ以前にパロディという言葉はあっただろうけど、映画のジャンルとして定着したのは本作が公開されてから。
スター俳優不在、監督も無名、ロマンス要素もない、元ネタは戦前の古典怪奇映画、しかもモノクロ! 外国のコメディ映画は当たらない、それが日本の常識だった1975年10月に公開。アメリカで大ヒットしてなかったら、前作「プロデューサーズ」同様、日本未公開のままだったかも知れない。

ジョン・モリスの音楽が素晴らしい。美術セットが素晴らしい。撮影が、照明が、衣装が素晴らしい。演出も正統派。手間もお金もかかっている。
ジーン・ワイルダーとテリー・ガーのアップなど、クラシックなロマンス映画と見間違えそうなくらい(「哀愁」のロバート・テイラーとヴィヴィアン・リーみたいに)綺麗に撮れている。怪物(ピーター・ボイル)の憂いをたたえた表情は、オリジナルのボリス・カーロフを超えている。
フェイド・イン/アウト、アイリス・イン/アウト、ワイプ、ディゾルブ、回転ワイプなど、場面のつなぎもクラシックな手法で凝っている。
これだけ立派に作れるのだから、間の抜けたギャグとシモネタをごっそり抜いて、シリアスな怪奇映画としてリメイクしていたなら名作と呼ばれていたかも知れない。
後年、デヴィッド・リンチ監督で製作した「エレファント・マン」がそんな感じか。

個人的に、マーティ・フェルドマンのカメラ目線のギョロ目と、警部(ケネス・マース)の義手ギャグ(「博士の異常な愛情」のパロディだろ?)が許せんのだ。
入れるか外すかで脚本家(ワイルダー)と監督(ブルックス)が対立したという「リッツで踊ろう」は、入れて正解。

DVD特典に入っていた1996年製作のドキュメンタリーによると、家政婦ブルッハー夫人の右顎のイボは、演じたクロリス・リーチマンのアイディアによるメイクだったそうで、これはもう完全に「レベッカ」のダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)を狙ってたってことで、それはもう見事に成功している。彼女はヒチコック・パロディの「新サイコ」でも同じような役を演じていた。

ジーン・ワイルダーの口髭がカット毎に違うのは、笑いを狙ってのことなのか、単なるミスなのか分からない。初めて観たときから、どっちだろうって、ずっと気になってる。

マデリン・カーンが絶世の美女に見えるカットが、ときどきある。
テリー・ガーは全編かわいい。

65

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
65点 上出来・個人的嗜好(78本)
60点 水準作(77本)
55点以下 このサイトでは扱いません

個人の備忘録としての感想メモ&採点
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